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I Must Go! 2012/10/26更新 【チームやまゆり #4】

箱根駅伝 『箱根駅伝』
生島淳【著】
幻冬舎
(2011/11発行)

 陸上競技ではトラックシーズンが終わり、駅伝・マラソンのシーズンを迎えました。図書館関係者には『風が強く吹いている』で一躍注目が集まった箱根駅伝は、数ある駅伝の中でも知名度が別格です。スポーツに興味のない人でも名称くらいは知っているでしょう。本書は単なる箱根駅伝感動物語ではなく、背後にある各大学の戦略や大学長距離界の実情等について監督インタビューを交えながら論じた本です。最初から駅伝に興味がない人には響かないかもしれませんが、箱根駅伝を時々でも観る人や『風が強く吹いている』を読んで感動した人には面白く読めると思います。
 今や箱根駅伝に出場することが知名度アップにもつながるため、近年の各大学の強化は目を見張るものがあります。高校有力選手のスカウト、最新のスポーツ理論に基づいたトレーニング、上位校の戦力はほとんど差がなくレース内容も年々レベルアップしています。戦力が拮抗している中、監督は選手の区間配置で勝機を得ようとします。先行逃切りか、後半追上げか、山登り・山下り逆転か、優勝狙いかシード権狙いか…根性だけでは語れない駆引きがそこにはあり、今まで漫然と観ていた箱根駅伝(もちろん他の駅伝も)が、サッカーや野球と同じく綿密な戦略に基づいたスポーツだと理解できます。まずはこの本を読み、前哨戦である出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝予選会を観る。そして正月にはいよいよ箱根駅伝観戦にのぞむといたしましょう。

【補足】タイトルの「I Must Go!」は83回大会までのエンディングに使われていた曲です。

<永淵 磨理子>
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