ひとこまコラムバックナンバー
ところ変われば、ところ変わっても 2013/3/19更新【チームつながる輪〜#9】
『アライバル』 ショーン・タン【著】 河出書房新社 (2011/04 出版) |
オーストラリアの作家による、ことばの説明の無い絵本(グラフィック・ノベル)です。まだ見知らぬ土地に働きに出てきた男性。
新天地に立つ緊張、ドキドキ、コミュニケーション・ギャップの不安、ストレンジャー感覚が描かれています。徐々に、主人公は暮らしぶりを覚え、やがて残してきた家族を呼ぶように…。
見知らぬ土地が、特定の土地をモデルとならないようにする為もあってか、未知の生物や、未知の文字を使って表されています。どの国の人が読んでも、似た感慨に浸れそうです。
生物たちは、その為個性的でカワイイキャラとして登場します。セピア調の風景描写とともに、主人公が働きにきた、外見が殺伐とした産業都市的風景の雰囲気を和らげています。
初めての土地に立つときの物珍しさ、戸惑いは、私自身も転校、転勤、転居で感じることがありました。見知らぬ人たちや暮しに、どう接していけばよいのだろうか。
日本の春は、新年度の開始。大半の学校では、新しい環境への、そして大きな出会いの季節でもあります。多様な生徒を日々受けとめる学校図書館でも、たくさんの人との出会い、本との出会い、が新メンバーを加えて始まります。
新入学の気分にも、この本の描いている世界は近いかもしれません。
別に居場所が変らなくても、急ぎ足に変容を続ける社会の中で、現在の立ち位置から、原点を、謙虚に、新鮮に振り返ることもまた,時々はしたいものです。
<宮ア 聡>