ひとこまコラム バックナンバー
ミル・ミラレル・トル・トラレル 2013/5/30更新 【チームひつじさん #11】
『ココロ・ファインダ』
相沢 沙呼【著】 光文社 (2012/04出版) |
思春期は過剰な自意識の塊。常に「自分はどう見られているか」に神経をすり減らし、「本当の自分」を探して迷子になる。化粧をしたり、制服を着崩したり、最近では外見をひっくるめた「キャラ」作りまでする。
かつてはプリクラ、ここ数年ではケータイやスマホの撮影機能で、誰でも気軽かつ日常的に姿を写し取る事が出来るというのも、それに拍車をかけているのかもしれない。
写真は被写体の内面を暴くこともあれば、撮影者の欲望の視線を詳らかにすることもある、ある種残酷なものだ。逆に写真だからこそ加工することもできる。「百聞は一見にしかず」、言葉以上に愛を伝える事も出来る。
この小説は高校の写真部を舞台に、写真にまつわる四つのささいな謎をめぐり、少女たちの瑞々しい心の揺れを写し取っている。カメラのファインダを挟む事によって、「見る」「見られる」という思春期で最もセンシティブな部分を浮き彫りにし、かけがえのない時間を切り取るという意味で、写真部というのはうってつけのモチーフだ。
著者は鮎川哲也賞を受賞したミステリ作家だが、この作品では謎解きはむしろ添え物。一番の謎は少女たちの心だ。
コンプレックスを抱えて身動きできなくなっている子に、そっと手渡したい一冊。
<佐藤 正子>