ひとこまコラム バックナンバー
未来を心配しているこの時間もきちょうなあなたの時間です 2013/10/30更新 【チームつながる輪〜 #16】
『ひだまり暮らし リラックマ生活10』
コンドウアキ【著】 主婦と生活社 (2012/09出版) |
「クマ来ましたか?」
図書館に3年男子が入ってくるなり、カウンターの司書に問う。「今日もまだ来てないね〜」と返事する。
もう挨拶がわりの日課のようになっている。
彼が心待ちにしているのは、有名なクマのキャラクターの絵本である。ページを開くとひとことメッセージが右側に、そのセリフに関連したイラストが左のページに描かれている
。どのページからも読めるが、文字のページだけ読んでもイラストのページだけ読んでも面白くない。見開きでセットでみると心がほぐれる本だ。
図書館には4巻目まで所蔵しているが、3年生の後半になって続きの6冊をまとめてリクエストしてきたのだ。「俺、このクマ好きなんです」と司書に告白してくれた
このキャラクターは女子に人気があるとは思っていたが、男子のハートもつかんでいたのか。
本校は進学校。3年生になると、どんなに読書家だった生徒もほとんど本は借りなくなる。たまに借りる生徒も「今頃こんな本を借りるなんて…」とつぶやいていく。
こんな本とは普通の小説だ。小論文対策になりそうな本は良くても小説は誘惑に負けたことになるようだ。
「たまには息抜きも必要だよね」と司書は彼らの罪悪感が減るように声をかける。
例のクマの絵本が届いた。いそいで受入・装備をして生徒に連絡する。昼休み、「クマ!クマ!」と生徒が図書館にやってきた。
貸出手続きを済ませるとさっそく閲覧席に座り本を開く。
近くにいた男子数人も寄ってきて仲良く静かに回し読み。微笑ましい光景だ。チャイムが鳴る。男子生徒は6冊の本をかかえて教室に帰って行った。
いつも疲れや不安、緊張、焦りでいっぱいの受験生。クマのひとことでちょっぴり元気が出たかな。
<キイロイトリ>