ひとこまコラム バックナンバー
大手町で会いましょう 2014/3/25更新 【チームやまゆり #21】
『風が強く吹いている』
三浦しをん【著】 新潮社 (2006/09) |
「今までに読んだ三浦しをんさんの作品の中で一番面白かったし、“青春”がぎゅっと詰まっている。」
と本校図書委員のYさんが薦めてくれたのがこの本であった。
都内の同じ大学に通う竹青荘の学生達十人が箱根駅伝出場を目指してにわかにチームを結成し一年足らずでその夢を実現してしまうという
ストーリー。しかもたった十人だけのメンバーは陸上経験の全く無い素人からプロ級の者まで様々。
高校時代に陸上選手として将来を嘱望されていたが、成果至上主義の指導に嫌気がさして退部をしていた
主人公の蔵原走(くらはら かける)がチームの主将兼コーチの清瀬灰二(きよせ はいじ)と出会って信頼を深め、
走るという行為にスピードだけではなく強さを見いだし成長していく過程が見事に書かれている。
さらにマンガおたくの王子や黒人留学生のムサや陽気な双子の兄弟ジョータ・ジョージなど
個性豊かなメンバーが沢山登場するのでスポ魂小説というよりユーモアにあふれた人間ドラマとして楽しめる。
駅伝本番が開始する第九章からラスト第十章までの約百八十ページにかけては、
区間ごとにメンバー達十人の個々の生い立ちや駅伝に対する思いが吐露されていて駆け抜けるかのごとくあっという間に読んでしまった。
何か面白い本を読みたいという生徒には今後是非これを薦めようと思った。
<村井 百合>