ひとこまコラム バックナンバー
生きづらさを抱えて 2014/06/30更新 【チームやまゆり #24】
『ぼくの守る星』 神田茜【著】 集英社 (2014/03 出版) |
学校図書館で購入する本を選ぶときには、直接本屋で本を手に取ったり、新聞の書評やインターネットの新刊情報を見たり、様々な本の紹介記事を参考にしています。作者紹介記事の中でみつけて読んでみて、とてもよかった一冊。講談師であり、新作講談でも人気を得ている神田茜さんの連作短編集です。ディスレクシア(読み書き困難)でクラス一勉強ができず生きづらさを抱えている主人公の少年、中学二年の夏見翔、クラスではとんちんかんな事を言う面白い子と思われています。彼と、息子のハンディキャップを担任や学校が理解していないと一人思い詰めている母親、翔と漫才を組もうと誘うクラスメイトや、クラスで孤立している少女の抱えている家庭の事情、海外単身赴任より帰国した翔の父親と母親のやりとりなど、それぞれの視点からのそれぞれの物語が短編作品として掲載されています。特に、心を病んでしまった母親と一緒に暮らしている少女の苦しみと救いを描く一篇と、最後に主人公の少年と少女が支えあう姿を描く一篇が、心にしみてきます。読後、人のぬくもりに心が温かくなる作品です。
<浦川 富二子>