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愛を感じる? 2014/10/27更新 【チームやまゆり #28】
『数学<超絶>難問 時代を超えて天才の頭脳に挑戦!』 小野田博一【著】 日本実業出版社 (2014/5 出版) |
全方位的選書をモットーとする司書稼業だけれど、自分が苦手な数学分野の選書はけっこうツライものがある。数学を愛する人たちは、いったいどんな数学本がお好みなのだろう?そして、数学苦手族が数学への愛を感じられるようになる本はあるのだろうか?
『数学<超絶>難問』という本を新着図書コーナーに置いた日、「何これ!おもしろそう!」と手に取ってくれたのは美術系女子。この人がまさか数学好きで、テストではいつも満点をめざしているとは、思いもよらなかった。数学のどんなところが好きなのか、ぜひ伺いたい。「たとえば、因数分解とかで、最初は数字や記号がたくさんあるのが、だんだん整理されていって、ばばーって全部片付いて、最後にぽんって答えが出て、ああすっきり!っていうのが、すごいかっこいい。」と説明してくれた。カウンターにいた図書委員も「あ、わかります、それ。」とうなずいている。そうか、かっこいいのか。
あらためて本を見てみれば、全部で79の問題と解説が載っている。ふむふむと問題をチラ見し、即行で解説ページを開いても、目が泳ぐばかりで内容は脳に届いてこない。そのまま数式から目を背けると、添えられているメッセージに目が留まった。
「解けなくても、少なくとも1週間くらいは考えてみましょう。あれこれ考えている(工夫を試みている)間、たっぷり楽しめますよ。すぐに答えを見て楽しみ損なったら、一生の損です。」
ああ、そうか。数学の問題の解き方を教える本じゃなくて、考える楽しさを伝える本だったんだ。テストじゃないからあわてなくていい。今すぐ解けなくてもOKで、ひらめく時を待てばいい。何日もかけていろいろ試しては失敗することも楽しめばいい。あ、もしかして、数学の美しさってそういうこと?それならちょっと愛を感じられるかも?いや、でも、やっぱり無理…?
そういえば、かの美術系女子は「0(ゼロ)の定義を本で読んだときに、うおう、0(ゼロ)すげえ!って鳥肌たった!」とも言っていた。これぞ、愛、だね。