ひとこまコラム バックナンバー
「他人事」、だけど無関係じゃないこと。 2015/06/24更新 【チームやまゆり #36】
『生きのびるための犯罪(みち)』 (よりみちパン!セ) 上岡 陽江/ダルク女性ハウス【著】 イースト・プレス (2012/10発売) |
学校図書館も、犯罪とは無縁じゃない。無断持出(窃盗)、借りパク(横領)、落書き・切り取り(器物損壊)、たまに暴力行為も。この本のような薬物関連にかかわったことはまだないけれど、司書を20年近くやっていると、けっこういろんな事件に遭遇する。無断持出があると、腹は立つし傷つくし、へこむ。でもひょっとするとやった方の人も、何かに腹を立てたり、傷ついていたりするのかもしれない。この本を読んでから、そんな風に思うようになった。
犯罪と書いて「みち」と読む。犯罪を肯定するわけじゃなく、「ほかに方法を知らなかった、ほかの方法を選べなかった」との意味だそうだ。
何かとつまずきの多い日常生活を、活字依存症の私は読書で現実逃避し、他人や世間をシャットアウトしてどうにか生きてきた。本が違法じゃなくてよかった(将来は『華氏451度』のようになるかも)。でも「ぜんぶにふりがな振ってほしいよ/むずかしい漢字ばっかりだと途中で読むのメンドくさくなる人いるでしょ……あたしがそうだけど」との、ある当事者の発言を読み、読書には逃避できない人もいると気づく。
依存は病気で、「いいとか悪いとかの価値判断や、意志の力ではどうしようもない」もの。無断持出や椅子を切ったりした人の中には、そんな人もいたかもしれない。彼/彼女らは無事に生きのびているだろうか。
この本でダルク女性ハウス(薬物などの依存症からの回復・自立支援施設)は、「ここは学校じゃないからね。知らないこととかできないことで非難されたりバカにされたりなんかしない場所」と紹介される。本当は、学校だってそうなのに。せめて図書館は、価値判断抜きに生徒によりそう場所でありたい。
薬物依存のような、重い経験をもつ人の闇は、当事者でないときっと本当にはわからない。学校図書館で遭遇する事件の当事者の闇も。経験のない私にとってはどうしても「他人事」だ。でも、決して無関係じゃない。そんな「犯罪(みち)」に触れるひとこまもある。