ひとこまコラム バックナンバー

ライトノベルから古典へ  2015/11/27更新  【チームつながる輪〜 #41】

『“葵”  ヒカルが地球にいたころ…… 』(ファミ通文庫) 『“葵” ヒカルが地球にいたころ…… 』(ファミ通文庫)
野村 美月【著】 竹岡 美穂【イラスト】
株式会社KADOKAWA
(2011/5/30〜)

 この本を手にした生徒が「続きを入れてほしい」とリクエストに来て、ついでに「源氏物語って葵とか出てくるんですか?」と聞かれたのが始まりでした。光源氏の年上の正室で……と話すと、「あーやっぱり一緒なんだ」と嬉しそうでした。
 この本は"文学少女"シリーズの著者が描いた、ミステリアスな学園ロマンスです。平安学園の"皇子"帝門ヒカルの幽霊につきまとわれた主人公赤城是光が、彼の心残りを晴らすために東奔西走する……という話。全10巻。それぞれの巻に、今は亡きヒカルを想うメインヒロインが登場します。1巻『葵』では、ヒカルの婚約者にして幼馴染。3巻『若紫』では9歳の美少女、5巻『末摘花』では素顔不明な謎の少女……という感じで、元ネタである『源氏物語』を知っているとより楽しめます。ヒカルは何故死んだのか?という最大の謎が気になりつつも、「女の子は花だから」と微笑むヒカルにツッコミを入れつつ奮闘する是光を応援したくなります。1巻の「葵の上」こと左乙女葵は、女癖の悪いヒカルを非難し、ヒカルの「約束」を果たそうとする是光に対しても頑なな態度をとりますが、そんな彼女の本当の想いが紐解かれていく展開も見どころです。このシリーズをきっかけに『源氏物語』の貸出も発生しました。
     

<小倉 奈々子>
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