ひとこまコラム バックナンバー
戦争のない世界を 2016/06/03更新 【チームつながる輪〜 #47】
『戦場のコックたち』 深緑野分【著】 民野宏之【装画】 藤田知子【装幀】 東京創元社 (2015/08発売) |
舞台は第二次世界大戦下のヨーロッパ。主人公はアメリカ第101空挺師団のコック兵ティム、19歳。ティムは、冷静だが味音痴のエド、プエルトリコ系の陽気なディエゴ、小柄だが態度の大きいスパーク、大柄で繊細な衛生兵ブライアン、作家志望のワインバーガーらと共に、度々の戦線や基地での奇妙な事件に遭遇する。その事件とは、機関銃兵ライナスのパラシュート集め、粉末卵消失、オランダで接収した民家に住む夫妻の奇妙な死、雪原の幽霊怪音であった。互いに無関係な事件が最後にひとつにまとまっていくところは興味深い。そして時を経るに従い、兵士達の結束が強まっていくのがよくわかる。
作者へのインタビューで、主人公をコックにした理由を、「戦場は命をなくす場ですが、コックたちは生きるための料理を提供する人たち。食料がなければ人は死ぬ。食べ物の尊さを象徴できるポジションだな、と思いました。」と語っているのを聞いた。前線で戦う兵士たちが、戦場でどんな食事を摂っているのか。テーブルに座って温かなものなど食べられるはずがないのだという当り前の事を再認識した物語だった。
登場人物と同年代であり、今平和な日本に住んでいる生徒達に是非読んでもらいたい。
<星>