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真の民主主義の構築に向けて 2016/08/25更新 【チームやまゆり #50】
『ぼくらの民主主義なんだぜ』 (朝日新書) 高橋源一郎【著】 朝日新聞出版 (2015/05発売) |
朝日新聞「論壇時評」2011年4月から2015年3月までの連載48本を収録したもの。
震災直後から連載が始まった。誰もが「ことば」を失った当時の状況下で著者は、あえて、「可能な限り耳を澄まし、小さな声や音を聞き取ろうと努めた」という。様々な文献が論評の対象になっているが、通底しているのは、民主主義の危機が叫ばれる中で、「これ以上の制度が考えられないのなら、おれたちは、『これ』をなんとか使えるものにする努力」をしなければならないという思いである。安直な「ファスト民主主義」ではなく、対話と熟慮を主体とする合意形成、「熟議民主主義」を提唱する丸山仁の考えもそのひとつだと言う。
2014年3月の台湾立法院の学生による占拠の際にあったあるエピソードが紹介されている。そこから私たちが学んだのは民主主義とは、多数派がすべてを決定し、少数派はそれに従うしかないのではなく、「意見が通らなかった少数派が、それでも、『ありがとう』ということのできるシステム」だという考え方である。必要な情報を開示し、少数派の意見にも真摯に向き合った合意形成の大切さということであろう。
民主主義的なるものを実践する場はあらゆる日常生活にも存在する。私たちも様々な問題に対し先入観なく真摯に向き合うことの大切さを確認したい。
この国に民主主義が根付いていないと言われて久しい。これからの民主主義の担い手である高校生にもこの書物をじっくり読んでもらいたい。
<竹内 淳>