ひとこまコラム バックナンバー
小さなひとコマ 2016/09/28更新 【チームひつじさん #51】
『百人一首ノート』 今日マチ子【著】 KADOKAWA メディアファクトリー (2016/03発売) |
買っちゃいました!」と朝の図書館に顔を出したのは、国語科のA先生。少し前に、某雑誌連載中の『百人一首ノート』(今日マチ子著)を話題にしたばかりでしたが、情報力に優れる彼はすぐに出版情報をキャッチし、発売日に現物を入手してわざわざ見せに来てくれたのでした。
この本では長年読み継がれてきた百首もの和歌を、自由なイメージで現代風にアレンジし、セリフのないコマ漫画に仕上げています。早速図書館用の一冊を購入し登録を済ませると、「司書のおすすめ」本としてカウンターの上に展示しておきました。
梅雨入り間近のある日、時々姿を見かけるようになった1年生のBさんが、この本を読んでいることに気付きました。戻しに来たタイミングで声をかけると、彼女は百人一首が好きで、何首もスラスラと暗唱できるとのこと。Bさんは「すっごく悲しいページがありますよね」と本をめくって指差しました。ひとつは数頭の犬が悲しげにこちらを見ているシーン。「これって檻ですよね」……なるほど、コマ割りの白い余白部分が、飼い主のいない犬たちを閉じ込める檻に見えます。元歌は相手の心変わりをなじる恋の一首だそうですが、詠み継がれてきた歌は、案外身近な情景に置き換えられながら共感を得てきたのかもしれません。ほかにも気になるページを開こうとしたところで、休み時間は終わってしまいました。
ほかの人の見方や読み方の違いに気付いたり、1冊の本を通して会話が生まれたり、新しい発見や興味が繋がっていったり。そんな学校図書館の日常の中に生まれる小さなひとコマにまた出会いたくて、おすすめの本を展示しています。
<神谷>