ひとこまコラム バックナンバー
「この本に出会えて幸せ!」 2016/12/21更新 【チームひつじさん #54】
『ベルリン1919』 『ベルリン1933』 『ベルリン1945』 (ベルリン三部作) コルドン,クラウス【作】酒寄 進一【訳】 理論社 (2006/02発売) |
「この学校に来て良かった!図書館でこの本に出会えたから……。」
ある日、生徒から言われた本です。そのとき私はまだ読んでいなかったのですが、その後この本を読んで私も同じように感じました。誰にでも人生の中で忘れられない本がありますが、この本は私にとってそんな一冊です。
書名の1919年、1933年、1945年というのはドイツの20世紀前半の転換期であり、その転換期にベルリンを舞台にそこで暮らす労働者の家族を通して、社会の変遷、労働者階級の人々の思いなどが描かれています。主人公はそれぞれ異なりますが、(一部は一家の長男13歳、二部は二男15歳、三部は長男の娘12歳)10代の子どもの眼から見た当時の社会の様子(帝国の崩壊、ナチスの台頭、ヒットラーが支持された理由、敗戦……)がとてもわかりやすい。そして、めまぐるしい時代の変遷に翻弄されながらもその中で懸命に生きた人たち(主人公一家)の生きる姿勢が切なくて胸が痛みます。
21世紀を生きる高校生にとって20世紀に起きた様々な出来事は過去の歴史の1ページになっています。歴史を記憶することは難しい。ましてや多くの人は不幸な歴史を忘れたいと思っているでしょう。でも、すでに亡くなった人たちの痛みを忘れない、そしてそれを未来へ繋げてゆくこと、それが本の役割ではないでしょうか。(もちろん本の他にも音楽、絵画、演劇……いろいろあります。)
この本には、今、私たちが忘れてはいけないことがたくさん書かれているような気がします。
<加賀 京子>