ひとこまコラムリターンズ 第40走者

いつかまた会うときまで   2021/12/24更新 

『ハッピーバースデー』


『ハッピーバースデー』(文芸書版)
青木和雄,吉富多美【作】
金の星社
(2005/4)

 二人の生徒から「この本を読んでから他の小説も読むようになった」「今まで読んだ中で一番くらいに好きな本」と教えてもらった作品です。元は1997年に児童書として出版された本で、以前勤務していた小学校の図書館ではよく見かけていましたが、未だに読んだことはありませんでした。同時期に二人に、しかも別々に薦められるなんて珍しいと思い私も読んでみました。母親からの精神的虐待で声を失う少女の物語ですが、文芸書版では主人公の母が娘を愛せない理由が丹念に描かれています。「事実や結果だけで判断してしまってはいないだろうか」「もっと人や自分に対して丁寧に向き合えるようになって、毎日を大切に生きていきたい」と思わせてくれる作品でした。

 他にも、自分が持っている本や前に読んだ本を探しにくる生徒は多いです。男子生徒数名が何か探しているようでしたので声をかけると「『かいけつゾロリ』なんてここにはないですよね?」。お話ではないけど『かいけつゾロリ大図鑑キャラクター大全』を渡すと、「子どもの頃に読んだ〜、このキャラ全部知ってる!」と小学生時代を思い出して懐かしんでいました。絵本の『ミッケ!』で競争したり、ポケモン図鑑でクイズを出し合ったりといった姿を見かけると、大人になる前に出会った本やその時の思い出はずっと心に残っているのだと感じます。いつか何かのきっかけで思い出したときに、その本たちが少しでも元気や勇気をくれる存在になっていますように。


<クローバー>
バックナンバーに戻る