ひとこまコラムリターンズ 第9走者
青春を全力で肯定する
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4月、新米の私は初めての選書に頭を抱えていた。生徒のニーズはまだ分からない、自分が良いと思う本が高校生にも楽しめるものなのか自信がない。そんな感じで悶々としていると、窓の外からポカリスエットのCM曲が聞こえてきた。どうやら体育祭の練習をしているらしい。窓を開けて下を見ると、生徒たちがダンスを踊っていた。
あ、これか。
私はパソコンの前に戻り、『POCARI SWEAT』という写真集を選書リストに入れた。
カウンターの目の前に新着図書コーナーがある。写真集の表紙が見えるように置いておくと、かなりの生徒が手に取っていた。
「これ、うちの制服じゃね?」いつもマンガしか手に取らない男子生徒が、興奮気味に隣の友人に話しかけているのが見えた。「確かに似てるわ」友人も熱心にのぞき込む。
「私もこんな青春を送りたかったなー」とつぶやいた女子生徒は、どんな気持ちでこの写真集を見ているのだろう。
いつもダンスの練習をしている生徒たちが、ポカリスエットのCM曲を口ずさみながら写真集をめくっていた。「うちらも写ってるかな?」と言って笑いあう姿を見て、自分の選書に少しだけ自信が持てた。
ポカリスエットのCMのためにダンスを練習する高校生たちの姿を収めた写真集。ダンスの練習シーンだけでなく、その合間に談笑する場面などが切り取られている。高校生の真剣な眼差しや充実感溢れる笑顔など、この一冊に青春が詰まっている。
<河村知佳>