ひとこまコラムリターンズ 第49走者

自己肯定感って何だろう   2022/10/03更新 

『ぼくは勉強ができない』


『ぼくは勉強ができない』
山田詠美【著】
新潮社(新潮文庫刊)
(2015/06)

 二十数年ぶりに図書館の担当に戻ってきました。授業や部活動、他の分掌業務も行いながらの司書業務であり、満足のいく活動ができていませんが、図書委員の生徒たち、図書係の先生方の力を借りながら、日々奮闘しています。
 この作品の内容に賛否はありますが、今の生徒たちはこの本をどのように読むのでしょうか。「僕は勉強ができない」「勉強よりもたいせつなことがいっぱいあると思う」と、はっきり言える主人公のように、はっきりと自己主張のできる生徒は多くありません。生徒たち一人ひとりは、良いところをたくさん持っているにもかかわらず、「自己肯定感」の低い生徒が増えていると言われています。「もっと自分に自信を持てばいいのに、あなたにはいいところがいっぱいあるよ。」と思いつつ、子どもたちにしっかりと向き合っていない自分に気づかされる瞬間でもあります。私たち大人が、自分の良さを主張できない環境を作ってしまっているのでしょうか。
 「探究学習」「観点別評価」そして「ギフテッド支援」、これらへの取り組みを考えると、学校図書館の活動に追い風が吹いていると言えるでしょう。生徒一人ひとりの学びを支援する、という学校図書館の役割がますます求められているのです。この風をしっかり捉えて、学校の教育活動に寄与できる学校図書館にしていきたいと思います。

<小川雅幸>

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