ひとこまコラムリターンズ 第59走者
すしんすしんすしん
2023/08/16更新
『すしん』 たなか ひかる【著】 ポプラ社(2023/2) |
「すしん、すしん、すしん」
昼休み、図書館から聞こえてくる謎の声。どうやら生徒たちが読み聞かせをし合っているようです。手元にあるのはこの本、『すしん』。
登場するのはただひたすらに疾走する「すし」たち。車輪に乗って、何かを目指して「すしーーーん」と走り抜けます。説明文は一切なし。読み手は「すしん」という言葉を追い続けるしかありません。1ページ目からそのスピード感に飲み込まれ、あっという間に読了です。
音読してみると楽しいよ、と生徒に勧めると、大抵やんわり断られます。けれど半信半疑でページを開くと、あら不思議、気付いたら声に出して読んでいる。せまる「すしんすしんすしん」、逃げる「すしーん」、空飛ぶ「すしししし」……思わず気持ちがこもります。読もうかどうか迷っている様子の生徒には、一緒に読む?と声をかけてみます。うん、と言われるとこちらも嬉しくなって、恥ずかしさを忘れて音読してしまいます。最後のオチにはみんなで「なにこれ!」。
高校生活、色んな悩みは尽きないと思うけれど、時々は図書館で何も考えない時間を楽しんでもらえたら嬉しいです。
<てぬぐい>