ひとこまコラムリターンズ 第60走者
サヤさん
2023/09/01更新
『七人怪談』 三津田信三【編著】 加門七海、菊地秀行、澤村伊智、 霜島ケイ、名梁和泉、福澤徹三【著】 KADOKAWA(2023/6) |
「私の気になるヒトは、サヤさんです。」
2年生のMさんは声をひそめて、そう言った。手には新着本コーナーから借りたアンソロジー『七人怪談』。最初の1編のタイトルが、「サヤさん」だ。
「サヤさんっていうのは実在しない都市伝説みたいな人物なんですけど、話が進むうちに、なんだかだんだんリアルさが増してきちゃって、存在感が出てきちゃうんですよ。絶対いないはずなのに、私も会った、見た、とかいう人が続々と出てきて、いる感じになってきちゃう。それがほんとに怖いんです。……ラストはなんと……!」
振り返ってみればネタバレだけど、気にならなかった。ここは自由にゆる〜く語り合う場。嫌だという人がいなければ好きにしゃべっていいのだ。
本を入口にして話をし、違う価値観の人とも知り合う。そんな場を作りたくて今年度の6月から「本をネタに話す会」を始めた。初回テーマは「推し本」、2回目は「このヒトが気になる!」(著者や登場人物・推しキャラなど)。この日は、サヤさんの他、さくらももこ、シャーロック・ホームズ、学校司書の「しおり先生」*など、さまざまなヒトについておしゃべりした。「クラスで本のことを話せる人がいなくて」、「受け入れてもらえて嬉しかった」、「自分では読まないような本の話が聞けて面白かった」……そんな感想を励みに、これからも試行錯誤しながら続けていこうと思っている。
<よこやまみ>
*『教室に並んだ背表紙』(相沢沙呼) 集英社