ひとこまコラムリターンズ 第67走者
図書館の宝物
2024/3/29更新
『また、同じ夢を見ていた』 住野よる【著】 双葉社 (2016/02) |
貸出期限票が貼ってある一番後ろの、ひとつ手前のページ。そのページには何も印刷されていない。いつだったか、何かの拍子にそのページを開き、それを見つけた。
よく、返却された本に、目印代わりに付箋が貼られていることがあるけれど、その付箋は、ページを開かないと見えないところに、ひっそりと貼られていた。しかも、2枚。
ひとつは、2.5cm×4.3cmのキャラクター柄の付箋。もうひとつは、1.5cm×5cmのシンプルなライムグリーンの付箋。付箋には、それぞれ違う筆跡でこう書いてあった。
〈すごいおもしろかった。いつかこういう「幸せ」を自分もみつけたい。〉
〈「幸せ」について考えて、答えを探す主人公に、自分までもが幸せを分けてもらっているような気がした。〉
本を読んで、自分の感想を遺したいと思った生徒がいたこと。そして、それをみつけて、同じように感じた生徒がいたこと。そのことが、なんだかとても嬉しかった。
「本が傷むから、本に付箋を貼らないで」と言われるけれど、こんな付箋なら貼ってほしいと思ってしまうし、気が付いてもはがせない。ン十年も司書をしているけれど、こんな付箋を見つけたのは初めてだったから、新入生の図書館オリエンテーションでも紹介してしまう。
「この本は、この図書館の宝物みたいに素敵な本です」
<からすみ>