ひとこまコラムリターンズ 第72走者

人が本と出会ううタイミング   2024/10/01更新

『ころべばいいのに』
『ころべばいいのに』
 ヨシタケシンスケ【著】
 ブロンズ新社
 (2019.06)

 ある日のこと、出勤すると絵本コーナーに畳が出現していました。
「えぇっ?」
 どこから?と思いきや、自分が帰った後に定時制司書の方が書庫で眠っていたものを設置してくれていたのでした。数日後、畳に座って絵本をひらく生徒を見かけ、新設スペースが気になっていた私はつい「何を読んでいたの?」と声をかけました。彼女が見せてくれたのはヨシタケシンスケ作『ころべばいいのに』。嫌いな人みんなころんでしまえばいいのにと考えている女の子が、その気持ちに向き合って受け止める方法を模索していくお話です。
 「子どもの頃に買ってもらって家にあるけど、ここにもあるんだなぁって。」
 「前に読んだときは、嫌いな奴ころべばいいのにって本と同じように思っていたけど、いま読んでいたら、最後のところでなるほどなーって思ったよ。」。
 などとしばらく面白ポイントをプレゼンすると帰っていきましたが、「読んだときの年齢で本の受け止め方が変わった」という話は印象に残りました。高校生へ成長する5年ほどの間に想像以上の心の変化があるのだということを改めて感じた瞬間でした。大人になってからの5年間とは感覚が違う……。
&ems;この会話をきっかけに、人が本と出会うタイミングについてより意識するようになりました。高校生世代に読んでほしい本、自分が高校生だったら読みたい本、いまこの時に出会えてよかったと思えるような本を差し出せるようにしていきたいです。
 ……そういえば、畳スペースの感想をすっかり訊き忘れてしまいました。


<みおつくし>
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