厚木東高等学校 > 校長だより(令和3年度以前) > 校長だより 令和2年度 > 【48】入学式式辞と本日の校内の様子 020407
更新日:2020年10月9日
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令和2年度神奈川県立厚木東高等学校
第75回入学式校長式辞
世の中がどんなに混乱していても桜は美しく咲き、木々は芽吹き、時間はいつもの速度で進んでいきます。今、この瞬間にも、世界中で、多くの人々が未知のウイルスと戦っています。そして、大切な人たちに別れの言葉を告げることさえできずに、苦しみながら命を落としています。長い受検期を乗り越え様々な夢や希望を持って本校に合格した諸君が、このような非常事態に新学期を迎えることになるとはだれが想像したでしょうか。
ただいま240名の入学を許可いたしました。希望の春、この良き日に、規模や時間を縮減したとはいえ、「第75回入学式」を挙行できますことを大変嬉しく思います。人生の新たな一歩を踏み出そうとしている240名の諸君。厚木東高校へのご入学、誠におめでとうございます。ようこそ厚木東高校へ!本日皆さんを東高の第75期生として迎えることを、教職員一同、大変嬉しく思っています。
諸君はこの入学式を決して忘れないでしょう。皆さんを手塩にかけて育ててくださった保護者の方々に、晴れ姿を見ていただくこともかなわない。来賓の皆さまや保護者の代表であるPTA会長さんにお祝いの言葉をいただくこともできない。それどころか、明日から普通に学校生活を始めることができません。対面式で先輩に会い、オリエンテーションを見て東高を肌で感じ、各部のパフォーマンスに胸躍らせ、どの部活に入ろうかとドキドキしながら、担任や新しい友達といっしょに学校中を見学して回る。いつも通りに始まるはずだった普通の日常が、奪われてしまい、誠に残念、平凡な毎日のありがたさが身に染みる思いです。すべては、平和の上に成り立っていたのです。
しかし、落ち込んでいる場合ではありません。全ての物事には意味があります。出来事の意味は、皆さんがそのことをどう受け止め、どう感じ、考え、どう行動するかによって決まってきます。わたくしは本日の皆さんのキーワードは『自立』であると考えます。入学式の立て看板と美しい花々を背景に目を潤ませながら写真を取ってくれるはずだった保護者の皆さま、帰りに重い教科書を持ってくれたかもしれない保護者の皆さまは、今日はいません。合格発表で、入学手続きで様々な書類を渡されたところから、この東高が目指す皆さんの主体的な学びはすでに始まっていました。自分で読み、自分で考え、自分で準備し、自分で学び、自分で決め、自分で自分のミライを切り拓いていく。今日は皆さん一人ひとりが、自立への正式なスタートを切る日です。
本校は、創立115年目となる、地域の伝統校です。明治39年の郡立女子実業補習学校に始まり、関東大震災や、太平洋戦争など、幾多の苦難や学校存亡の危機に見舞われながらも、名を変え、形を変え、場所を変え、明治・大正・昭和・そして平成の歴史を、誇り高く生き抜いてまいりました。広大な敷地と豊かな自然環境に恵まれ、地域の皆さんに愛され、親しまれてきた本校は、穏やかで落ち着いた校風のもと、これまで世に送り出した卒業生の数は2万5千を超えます。新しい時代「令和」に、この学校の一員となったことを、どうかみなさん、誇りに思ってください。皆さんの東高での3年間が、皆さんの人生においてかけがえのない宝となるよう職員一同全力でサポートします。3年後に、ここで盛大な卒業式を開こうではありませんか!
「予測不能な未来の社会を自立して幸せに生きて行ける生徒を育てること」、それが本校のスクールミッションです。そこで、本校が育てたい生徒像として「他者を思いやり、自己実現に向けて果敢に挑戦する生徒」を掲げています。そして、その達成のために、皆さんに次の3つの能力を身に着けてほしいと考えています。
1つ目は、「自ら課題を見つけ主体的に学び続ける能力」です。産業構造が変化する時代においては、一生一つの会社に勤め、同じ仕事を一生し続けることは難しくなります。幸せに生きるためにつねに新しい知識や技能を身に付けキャリアアップしていかなければなりません。自分を知り社会の変化を知り、今、何を学ぶべきなのかというところから自分で考えなければならない時代がきています。基礎的な知識技能を身に着けることはこれまで通り大切ですが、情報を読み取り、考え、判断し、表現する「新しい学力」がますます重要になってきます。
2つ目は、「人と繋がり社会に貢献する能力」です。答えのない困難な問題に対して、様々な異なる考えを持った人たちを調整し、みんなが納得するよりよい解決策を見出し、協力して実行していく。そのためには、他者を理解し、他者を思いやり、自分を表現して相手にわかってもらう力が不可欠です。コミュニケーション力、常識やマナー、人と良くつながる力は、いつの日か自分らしく社会に貢献するためにとても大切な力です。
そして3つ目は、「進路実現と社会的自立に向かう能力」です。困難に負けず、より高い目標に挑戦する力です。現状に満足し、新しい仲間や新しい考えを排除し続け、互いに敬意を払えないような社会に平和や発展はありません。挑戦には勇気や努力が必要ですし、挑戦には困難が伴います。しかしそういった困難を通り抜けてこそ初めて人は成長することができます。
厚木東高校は、全ての教育活動において「学び続ける力」「人とつながる力」「自立に向かう力」の3つの力を育成し、生徒の主体性を伸ばします。将来自分は何をして生きていくのか、3年間真剣に考え抜きながら、「厚木東でチャレンジ!」のスクールモットーのもと、いろいろなことに挑戦してください。
もう一つ、入学にあたり、校長として皆さんにぜひとも伝えておきたいことがあります。社会のルールにはいろいろなものがありますが、まず、何より一番なのは、命を大切にすることです。自分の命はもちろんですが、他の人の命についても同じです。だから、コロナ感染予防に努めるだけでなく、交通事故にも気を付けてください。さらに、自分の体や心の健康を大切にしてほしいことは言うまでもなく、友達の人権を大切にすることも忘れないでほしい。それもまた、命を大切にすることだからです。SNSなど言動には責任を持ち、人として間違ったことをしていないか常に自問自答してください。もちろん失敗して全然構わない。それが学校という場の役割です。ただし、間違ったと思ったときあなたがどう行動するのか。それが肝心です。
厚木東高校もまた、困難や変化を恐れず皆さんと共に挑戦し続けます。命を大切に前進していきましょう。「明けない夜は無い。」そう信じて、今自分がすべきことを一つずつ、しっかりやっていきましょう。
令和2年4月7日
神奈川県立厚木東高等学校
第35代校長 村越みどり