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更新日:2023年8月31日

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萩庭校長の学校自慢

「萩庭校長の平盲自慢」第3回

シリーズ第3回は「アイキッズルーム(乳幼児教育相談)」の紹介です。

本校には、時々、赤ちゃんが来ます。よちよち歩きの子どもが廊下を歩いていることもあります・・・公立の学校なのに、なぜ?って、本校は0歳児からを対象とする「乳幼児教育相談」を行っているからです。その名も「アイキッズルーム」。

本校幼稚部の対象は3歳児からですが、その前、生まれてからすぐでも、見え方の気になるお子様のために、生活、遊び、まなびについて早期からの支援を行っています。

「そこへ行ったら盲学校に入学しなければいけないの?」とおっしゃる方がいますが、そうではありません。本校のような特別支援学校に入学するには法律で決められた障害の種類及び程度に適合している必要があるので、相談に通ったからといって入学しなければいけない、ということはありません。

なぜ本校が0歳児からの相談を行っているのか、と疑問に思われるかもしれません。特別支援学校には、法律で定められた2つのミッションがあります。一つは自校の児童生徒等(幼児を含む)の教育を行うこと(学校教育法第72条)、もう一つは、地域の障害のある児童生徒等の支援を行うこと(学校教育法第74条)で、「特別支援学校のセンター的機能」と呼ばれています。本校の乳幼児教育相談は、この役割によるものです。

全国の視覚障害のある子どもの教育を行う特別支援学校でも、乳幼児相談として0歳から小学校入学前までの相談を行っており、本校も同じ取り組みをしているということです。

乳幼児教育相談「アイキッズルーム」は、地域でよりよく生活していくために、今できること、これから起こりそうなこと等を、保護者と一緒になって考え、対応の提案もしていきます。

こんなことありませんか?

  • 見えにくさがあるけど、どんなことから始めればいいの?
  • 遠くのものに気づきにくいようで心配です
  • よく目を近づけて見ているんです
  • 段差が見えにくいのか、よく転ぶんです
  • (幼稚園で)先生が「こっちをみて!」と言っても知らんぷりするんです

これが視力の問題なのか、聴力の問題なのか、それとも認知の問題なのかはわかりませんが、一緒に「アイキッズルーム」で遊んでいる中で、わかってくることがあります。それについて「ご家庭でこんなことに気を付けてくださいね」「こんな遊びに興味がありますね」等々、一緒に成長を見ていきます。また、これから保育園へ行こうか、幼稚園へ行こうか、そこで子どもの様子や支援についてどう説明すればいい?と迷われる保護者は多いものです。それらを一つひとつ一緒に考えていきます。

子どもの成長は早く、遊びの次には学習の課題が出てきます。幼児さんの生活では細かな文字等を追ったり、黒板の文字を読んだりすることは少ないので、他の子どもと同じように行動できているように見えることがあります。しかし小学校では文字の認識など、ミリ単位の線を見分ける必要が出てきます。「アイキッズルーム」では、就学前に見る力、手指を使う遊び等、まなびにつながる支援を行っています。

本校の乳幼児相談担当者(令和5年度は2名、特別支援学校経験の長い教員と自立活動教諭(臨床心理士)が担当しています)が、直接、保育園、幼稚園や小学校等へ伺い、授業や生活の様子を見て、よりよい支援の方法等を担任の先生、学年の先生方と一緒に考えていきます。訪問した学校等からは「来てもらってよかった」とお言葉をいただくことが多くあります。

このホームページの「メニュー」⇒「地域の方へ」⇒「教育相談」⇒「乳幼児の教育相談」を開いてみてください。「アイキッズルーム」の紹介と、「こどものまなざし」という連載があります(2023年6月第10号掲載中)。

乳幼児相談のことだけでなく、「子どもの興味を引く(第2号)」「触る経験を増やして、世界を知りたい気持ちを高めていく(第3号)」「土台となる体験を増やす(4号)」など、保護者だけでなく、子どもに関わる皆様にも読んでいただきたい連載です。私も新しい発見をさせてもらっています。

「アイキッズルーム」の「アイ」は、目の「eye」と愛情の「愛」を意味している、と聞いていますが、私はもう一つ、出会いの「会い」も含んで欲しいと思っています。お子さんの応援団がここにいますよ!ぜひ、遊びに来てください。一緒に成長を見守りませんか?

アイキッズルーム 0歳〜5歳児対象 相談無料 電話0463-31-1341

相談日 月曜日〜金曜日 10時~12時、14時~16時

「萩庭校長の平盲自慢」第2回

好評のシリーズ第2回は「PTA」の紹介です。

本校は、幼稚部(3歳児・4歳児・5歳児クラス)、小学部、中学部があり、令和5年度の幼・小・中学部の幼児・児童・生徒の合計人数は14名です。

高等部には普通科と専攻科があり、高等部普通科は15歳~18歳の生徒が在籍しています。今年度4月より成人年齢が引き下げられたので生徒が18歳の誕生日を迎えると「成人」となり、「保護者」はいなくなります。なので、本校のお知らせは、本人を含むので「保護者等の皆様」として「等」に生徒本人を含めて通知しています。

高等部専攻科は18歳以上の方で、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格の取得を目指して学んでいます。多くは40歳代、50歳代の見えない・見えにくくなった視覚障害の方で、中にはそれ以上の年齢の方もいます。

PTA活動というと、保護者と教員が共に活動するものですが、本校のように成人の当事者が半数以上を占める学校においては、なかなかPTA活動が進めにくいことがあります。

ただ、本校のPTAの素晴らしいところは、「できない」を先に出すのでは無く、どうしたらこの状況下でできるのか、を考えてくれるところです。それを強く感じたのは、今年5月、本校を会場として「関東甲信越地区盲学校PTA連合会総会及び研究協議会」を開催した時です。4年ぶりの参集開催に不安はありながらも、「参集して協議をしたい」という校長の思いをくんでくれました。集合開催の経験がある保護者は少なく、PTA会長を中心に、そのときにできる人が、できるところから、準備を進めてくださいました。お仕事があったり、介護があったり、皆さんそれぞれの事情はおありですが、ここは私が、これは私が、と分担して準備をしてくださいました。おかげで、おもてなしの気持ちあふれる、温かい大会になりました。

もう一つのエピソードは「プール」です。コロナ禍で実施できなかったプール指導ですが、コロナが5類になった今年の夏はできるだろうと、プール指導再開を心待ちにする声が聞こえていました。コロナ以前は、PTAの皆様が校庭横の屋外プールの周りの草取りや、更衣室の清掃等、プール指導前の準備に力を貸してくださったそうです。幼児・児童・生徒数の減少で、PTA活動を行う保護者数は減ってきましたが、それでも「今年はプール指導、あるんですよね?いつ草取りしましょうか?」と声をかけてくださいます。子どもたちの笑顔のために、できることを探してくださいます。その期待に応えようと、プールの水を抜いて清掃をしたところ・・・プール施設に修繕を必要とする箇所が複数あることが判明。今年もプール指導はできないのか、と頭をよぎりました。しかし、子どもたちだけでなく、全面協力してくださる保護者の想いも踏まえて、教員が代替案を考えました。おかげで、近隣の公営プールを利用してプール指導が行えることになりました。

これらを振り返ると、PTAの皆様が子どもたちのために頑張ってくださることで教員もそれに応えようと頑張る、また教員が頑張っている姿を見てPTAの皆様が力を貸してくれる、そんな1+1が2以上の力になっている、まさにみんなが子どもの応援団なんだ、とあらためて感じたところです。教員をやる気にさせてくれるPTAの皆様は、まさに平盲自慢です。

秋には、地域の皆様のご協力により、PTA対象の「牧場での乳しぼり体験」イベントが開催されます。いろいろな方を巻き込んで、平盲をもっともっと元気にしていきましょう。今後とも、よろしくお願いします!

新シリーズ「萩庭校長の平盲自慢」

記念すべき第1回は「給食」の紹介です。

本校の給食は、校内の厨房で作る自校給食です。多くの学校給食は1日1食ですが、本校には寄宿舎があるので1日3食を厨房で作っています。平日3食分の献立を考える栄養教諭、そして朝早くから夕方まで調理してくださる調理員さんのおかげで、おいしい給食をいただくことができています。いつも、ありがとうございます。

これは、とある日の給食メニューの写真です。

平塚盲学校の給食です

メニューは、黒パン、チキンピカタ&マスタードソース、アスパラガスのサラダ、レタススープ、牛乳

本校は、見えない・見えにくい幼児児童生徒の学校なので、給食はお盆のどこに食器等があるか、担任等が食べる前に時計の文字盤の数字で伝えます。それにより幼児児童生徒は自分で確認しながら食事をとっています。

黒パン(8時)、チキンピカタ&マスタードソース(11時)、アスパラガスのサラダ(真ん中よりの3時)、レタススープ(4時)、牛乳(1時)

では、こちらのメニューは?

写真には、お盆の上にパンとお椀と牛乳、そしてお皿が6枚のった給食が写っています。

平塚盲学校の配慮食です

1枚目の写真はお皿が2枚でしたが、2枚目の写真では6枚あります。お皿の数は違いますが、同じ日の同じメニューです。

これは、配慮食といって、食べる機能の発達段階に応じた食形態で提供される給食です。成人嚥下(口唇を閉じた状態で、舌で食物を奥に運んで飲み込むこと)の獲得→押しつぶしの機能→咀嚼機能の獲得に合わせて、経口摂取の準備食→初期食→中期食→後期食→普通食となっていきます。

(参考資料:食事に関して支援の必要な子どもに対する食事指導ガイドブック―安全で楽しい食事のために―(神奈川県肢体不自由児協会))

2枚目の写真は、初期食から中期食へ移行する段階で、11時にあるペースト状のサラダの横、1時の方向にスプーン1杯分だけ、少しつぶつぶした押しつぶせる状態のアスパラガスがのったお皿があります。これは、毎日、食事の様子を見ている栄養教諭が担任と相談し、担任は保護者と相談しながら、舌の動きや、補食の様子に合わせて、少しだけ食形態を変えて提供しているものです。

お皿が多いのはそのためで、サラダはペーストとつぶつぶで2種類2皿、スープはお椀の汁とは別に具をペースト状にしたものと押しつぶせるものがお皿にのっています。チキンも同様。なので、2皿が6皿へ変身しています。

本校では、配慮食を提供する幼児児童が数人であることと、厨房施設に限りがあることから、十分な配慮食を提供することは難しい状況ですが、栄養教諭の熱意と知識と工夫、そして調理員さんたちが子どもたちのために手間をかけて調理してくださることで、一人ひとりにあった食形態の提供が実現できています。

食べることは生きること、おいしい給食が元気の源です。本校は幼稚部3歳児から、専攻科の60歳代の生徒さんまで、大家族のような給食です。例えば、麻婆豆腐。辛みを含まないものが小学部3・4年生までの幼児児童に提供されます。給食前に校長が行う「検食」は、辛みありと辛みなしの両方を検食するので、結構、おなかがいっぱいになります。でも「辛みを加えると味が深まる」と実感できるのも、食べ比べてこそ。今は辛くない麻婆豆腐を食べている児童さんも、成長して辛い麻婆豆腐を味わってほしいものです。

本校の安心安全な給食は、多くの人の力によって提供されています。さあ、今日もみなさんに感謝して、いただきます!