横浜国際高等学校 > 在校生・保護者の方へ > 校長だより(Vol.5)アラビア語の学びから広がる世界観

更新日:2023年9月4日

ここから本文です。

校長だより

Vol.5【アラビア語の学びから広がる世界観】(令和5年8月1日)

横浜国際高校(YIS)は、日本全国の公立高校で唯一、アラビア語の講座をもっている高校です。中東や北アフリカを中心に、世界で約3億人の人々が使用し、国連の公用語にもなっているアラビア語。現在の国際社会をよりよく理解するために、アラビア語圏の多様な文化を知ることは不可欠とも言えます。今回は、アラビア語を学んでいるYIS生に、その魅力について聞いてみました。

YISの国際科では、第二外国語を履修することになっていますが、6つの第二外国語の中で、アラビア語を選んだ理由は何ですか。

「私はとても単純なんですけど、アラビア語ができたらカッコいいだろうな、と思って取りました(笑)。右から左に書くことは知っていたんですけど、それがとても新鮮でした。」

「世界的に見てアラビア語って結構話されていて、その言語を公立高校で学べるというのは魅力的だなと思って取りました。」

「私がアラビア語を選んだ理由は、6つの第二外国語の中でまったく何も知らなかったのがアラビア語だったからです。未知の世界を学んでみたいと思いました。」

アラビア語履修者にインタビュー

アラビア語履修者にインタビュー

 

「小さい頃から古代エジプトを題材にしたマンガを読んでいたんですが、そこに描かれているアラブの雰囲気が好きで選びました。」

「初めて会った人にアラビア語ができると言ったら、とても印象に残るかなと思ったからです(笑)。そういうシンプルというか軽い気持ちで始めました。」

アラビア語の授業を受けて、アラビア語の魅力をどんなところに感じますか。

「魅力は人数の少なさ?(笑)です。少人数だからとても質問しやすいし、それから仲良くなれます。一緒にモスクなんか行ったりするくらい仲良くなれます。」

「アラビア語は言葉の中に文化的背景が含まれているので、言語をとおして文化を学べるところが魅力だと思います。」

「日本語は古典なんか読むと文字とか文法とか今とは違っていますが、アラビア語は昔から文法とか変わらず引き継がれていて、そのへんがすごいなぁと思って、日本語との違いに魅力を感じます。」

「発音が美しいところが個人的に気に入っています。また、話し言葉だと、語尾が省略されたりして、文法的にはややこしくなりますが、それをむしろ意識して話せるとやりがいを感じます。」

「アラビア語はアラブの人たちの共通言語であるだけでなく、イスラムを信仰するムスリムにとっても親しみのある言葉になっています。日本にいるムスリムは、アラブ系の人ばかりではなくて、インドネシアやクルドの人がいたりしますけど、その人たちは、アラビア語が母語でなくてもムスリムであることで、アラビア語の1フレーズを会話の中で使うと、一気にキョリが縮まったりする気がします。クルドの人に日本語を教える場面があったんですけど、その方は英語も日本語も話せなくて、私もクルド語が話せなくて、そのとき、相手が書いてくれた日本語に対して私がアラビア語でマーシャーアッラー(素晴らしい)と言ったら笑ってくれたんです。母語が違っていてもアラビア語を通して心が通じるところが魅力です。」

言語文化研究でのクッキングのひとコマ

言語文化研究でのクッキングのひとコマ

中央:マクルーベ(シリアの家庭料理)。ナスと肉の炊き込みご飯。

小鉢:キュウリのヨーグルトサラダ。ヨーグルトとニンニク・塩・ミントで和えたもの。

アラブの映画、音楽、料理などの文化を楽しみながら学ぶ「言語文化研究」という授業があります。生きたアラブ文化に触れた感想を聞かせてください。

「日本と全然違うなという感想です。アラブ料理をつくったときも、これとこれを混ぜて大丈夫なの?(笑)と驚く場面があります。」

「日本ではしてはいけないことがアラブではしないといけないことがあったり、逆に日本では許されていることがアラブではだめだったり、アラブと日本とで考え方が180度違う!みたいなことがあって、これまでの自分の視野の狭さを感じることがあります。」

「私は逆に日本との違いだけでなく共通点を見つけることが楽しいです。例えば、日本には書道の文化がありますが、アラブにも書道の文化があって、でも、同じ書道文化でも中身は違っていたりするので、日本とアラブは遠くて近く、そして、近くて遠い、そんな気がします。」

「アラブの映画を観て、アラブの宗教観に疑問をもつアラブの少女がいることに意外さを感じました。アラブ文化に対して私がもっていた先入観みたいなものも感じました。私はこれまでアラブのマンガをとおしてアラブのカッコよさとか美しさというのを感じていましたが、アラブの映画を観て、これまでと違ったアラブ文化を知ることができました。」

「一言でアラブ世界といっても、国や地域で違っていることに気づきます。私たちはアラブの文化をひとつのイメージでくくろうとしますけれど、たとえば、サウジアラビアだけを見て、これがアラブだと言うことはできませんし、そういったことを感じることが多いです。」

アラビア料理(ロールサンド)

ファラーフェルサンドを作りました!

ファラーフェル(左奥)は豆で作ったコロッケ。丸い平焼きのパン(後方3皿)にホンモス(ひよこ豆ペースト)(左下)を塗り野菜などと一緒に包む。

 

YISで学んだアラビア語の知識を将来どのようなことに生かしていきたいですか。

「私は最近航空関係の仕事に興味を持ち始めているんですが、アラビア語の知識をそういうことに生かせていけたらいいなと思います。」

「私はアラビア語だけでなく、アラビア語の学習を通して身に付けた異文化理解の力や意識を将来生かしていけたらいいなと思います。自分にはまだ見えていないものがあるんだという意識をこれからも大切にしていきたいと思います。」

「私は、アラブの映画やドラマの翻訳作品などを日本で発信していきたいと思います。もう少し言うと、現在の日本では、アラブの映画やドラマが、少し偏見を持たれて受け止められているように思います。リアルなアラブ世界を発信したいですし、何も知らないことからくる偏見とかを生み出さないようにしていきたいと思っています。」

「アラブ問題の議論に参加できる人になりたいです。問題をよく知るためには、日本語の資料から得られる情報とアラビア語の資料から得られる情報と、たぶん視点が違うと思います。アラビア語の勉強を大学でも続けたいと思いますし、アラビア語の知識を使って将来仕事に就けたらいいなと思っています。」

「私はYISのアラビア語の授業で一気に自分の興味がアラブの世界とかイスラームの世界に行ったので、将来の大きなちゃんとした目標はまだ言えないですが、大学でイスラームの勉強をしたいと思っています。そしてYISで学んだアラビア語の知識を大学でもっと伸ばして自分のイスラーム研究につなげたいです。」

 

生徒は、アラビア語の学びを通して、これまでの自分の中にはなかったあらたな世界観を構築してくれているように思いました。これからも、アラビア語を学ぶ魅力について、一人でも多くの人に知ってもらいたいと思います。

 

バックナンバー