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更新日:2024年10月28日

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校長だより

Vol.18 【IBコース・科学協働プロジェクト(CSP)を終えて】(令和6年9月30日)

9月21日(土)、YIS祭(文化祭)の2日目、国際バカロレア(IB)コース2年次の生徒たちによる「科学協働プロジェクト」(CSP:Collaborative Science Project)の発表が行われました。CSPとは、IBコースのグループ4(理科)で必須の学術的活動です。生徒は共通のトピックについて問題の分析や解決に協働して取り組み、その活動は成果よりプロセスが重視されます。

今年度の共通テーマは「地球温暖化の影響とその先」です。各グループには、物理、化学、生物を選択する生徒がバランスよく含まれ、それぞれの視点から課題を分析しグループでポスター発表を行います。今回は3つのグループから、物理、化学、生物をそれぞれ選択する生徒3名にインタビューしました。

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今回、共通テーマに関連したグループテーマを決めるところからスタートしました。その際、どのようにグループテーマを決めましたか。

「私のグループでは、『水蒸気と二酸化炭素が地球温暖化に及ぼす影響とその先』というテーマにしました。このテーマにした理由ですが、地球温暖化は二酸化炭素の増加によって進行している、というのが私たち共通の知識だったのですが、調べていくうちに、実際に温室効果ガスで影響が大きいのは二酸化炭素よりも水蒸気だということがわかりました。水蒸気の量は人間がコントロールすることが難しいので、二酸化炭素の方を地球温暖化の原因と考えてしまっているのではないかという疑問を持ちました。私のグループは、地球温暖化の本質的な原因を理解したいと考えたので、二酸化炭素だけではなく水蒸気にも目を向けて、この2つを研究していくことに決めました。」(物理選択者)

「私のグループのテーマは、『二酸化炭素の増加による身の回りへの影響とその解決法』です。最初は、そもそもどういう解決法があるのかについて、分野に分かれずに全員で調べて、その後、解決法があるのなら、どの分野でどういう実験を進めるのが一番いいのかを考え、適切なものを割り当てて進めました。」(生物選択者)

「私たちは初めに地球温暖化によって起きている環境問題をグループでディスカッションして、特に異常気象が大きな問題だと考え、その中でも降雨量が増加して土砂災害の危険性が高まっていることをみんなで共通認識として持ちました。YISの周囲も土砂災害警戒区域が多いので、今回は土砂災害をメインに考え、土砂が崩れないようにするにはどうすればよいかについてテーマにしました。」(化学選択者)

グループテーマを決めた後、次は各個人に分かれ、それぞれの視点や方法で課題分析(実験・調査)に入りました。グループテーマの答えを得るために、自分のテーマやアプローチをどのように考えましたか。

「私は、水蒸気と二酸化炭素がそれぞれどのくらい温まり方に違いがあるのかを個人テーマにしました。アプローチとしては、読んだ本の中に自分のテーマにフィットするような実験が載っていたのでそれを参考にして、実際に学校で実験できる範囲を考えて担当の先生と話しながら決めました」(物理選択者)

「私のグループでは、解決策を担当する人たちと身の回りの影響を担当する人たちに分けたのですが、その中で私は生物分野の担当として身の回りの影響を考えることになりました。そもそも生物と関係する身の回りのものって何だろうということから始めて、今回は食べ物の中で穀物などの植物に焦点をあてて、二酸化炭素とどうやって関連付けられるのかを考えていきました。」(生物選択者)

「私は化学の視点から、雨が酸性雨だった場合に土砂の流出にどう影響を与えるのか、というテーマを設定しました。具体的には、酸性雨の目安とされるpH5.6を基準にして、pH5.6以上の蒸留水、そして酸性雨として見立てたpH5.6以下の硫酸銅水溶液とを比較して、土砂の流出する量が異なるのかを実験しました。」(化学選択者)

各個人の探究の成果を再びグループに持ち帰って、今度はグループとしてまとまった発表への準備が始まりました。自分が履修している理科の科目とは別の科目を履修している生徒の探究成果を聞いて、どのような気づきがありましたか。

「私は物理分野で水蒸気と二酸化炭素の温まり方の違いということで、そもそものメカニズムの観点から研究したのですが、同じグループの生物分野と化学分野の人は、温室効果ガスが増加したことによる悪影響はもちろんのこと、もしかしたら良い影響もあるのではないかということについて研究していました。私は別の科目を履修している友だちのそのような研究を聞いて、ひとつのグループテーマでもいろいろな科目の観点から考えられることを興味深く感じました。」(物理選択者)

「私は生物と化学は履修していますが、物理は正直苦手で接点がこれまでありませんでした。個人研究のあと、再びグループで集まったときに、物理を担当している友たちの研究をとても興味深く思いました。私は二酸化炭素の植物への影響を研究しましたが、物理の友だちは、二酸化炭素がリモコンの赤外線にどう影響を与えるかという研究をしてきました。それは自分では考えたことのない発想だったので刺激的でした。」(生物選択者)

「私も生物と化学を勉強していて物理は履修していないのですが、ふだんはこの3科目は分かれてやっているのに、今回CSPで協働的にやったことで、物理を履修してなくても物理の視点から物事を考えられるようになって、そういう理科のつながりみたいなものを感じることができて面白かったなと思います。」(化学選択者)

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 科学協働プロジェクト(CSP)に取り組んで、どんな感想を持っていますか。

「私自身もともと地球温暖化に興味があったので、今回のテーマについて個人的にはやったぁ!という感じでした(笑)。私は別の課外活動でも地球温暖化について取り組んでいるのですが、自分が学校で学んだこととの結び付きは弱いなと感じていました。しかし今回のCSPでは、自分が授業で学んだことをそのまま生かして、私の場合、物理という観点から実験して、調査して、考察して、というこのプロセスがとても楽しかったですし、昨日の発表では、様々な質問をもらい、いろいろなコミュニケーションが生まれたという点がとても楽しかったなと思います。」(物理選択者)

「中学までの実験だと、何をしてどういう器具を使ってというのを先生が全部書き出した上で、自分たちはあまり考えずに、といったら少し悪いのですが、そんなに想像性が求められる実験ではなかったと思っています。今回のCSPは、実験で何をしたいのかも最初から自分で考えるし、したいことのためには、どのような器具を使えばいいのか、例えばビーカーでもどのサイズがいいのか、なぜそのサイズがいいのか、すごく考えないといけなかったので、そこがCSPのユニークなところだと思うし、これから先、授業の実験でレポートを書くときも、将来の職業でも役に立つスキルだなと思いました。」(生物選択者)

「私も生徒主体で実験や研究を進めていくというのは初めての経験でしたし、今までやってきた日ごろの実験のスキルとかもこのCSPで生かせたので、それも良かったなと思います。IBならではの経験ができて良かったと思います。」(化学選択者)

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最後に、IBコースへの入学をめざしている中学生にメッセージをお願いします。

「YISのIBで良かったなと思うことは、私は将来の夢とか明確に決まってなくて入学したのですが、用意されている科目数がとても多かったり、先生も友だちもすごく相談にのってサポートしてくれたりするので、自分のモチベーションにもつながって頑張れるというのがあって、すごく良い環境ですし、入って良かったなと毎日思っています。」(物理選択者)

「IBならではの特色とYISのIBならではの特色と両方あると思います。IBだから自立性や創造性がすごく求められるということはありますが、YISのIBということで限定すると、少人数クラスなので多くのことが求められると思います。私は中学校が大きいところから来たので、発言数が少ないというか多くのことを求められなかったということがありました。だからYISのIBに入ると、学力とかも自分が押されているような気分になりますけれど、今までより成長できると感じています。だから頑張ってほしいです。」(生物選択者)

「私は、先生が教卓に立って生徒はそれを聞く、といった中学校の授業スタイルが結構苦手だったので、YISの雰囲気もそうですし、IB自体もふだんから生徒が主体で授業をする、生徒が前に立ってやるというのがあたりまえのような授業が気に入っています。そうしたもっと発言したいとか周りとディスカッションしたいとか、そう思っている人がいたらぜひYISのIBに来てほしいと思いますし、IBならではのCASとかTOKとか、それからこのCSPとか、それから数学を英語でやるとか、そういう今までやったことのない経験がYISのIBに入ったらできるので、新しいチャレンジをしてみたいと思う人は本当におすすめだと思います。IBは楽しい部分が多いですけど、勉強は大変な部分があるので、そこは言っておきたいと思います。入ってから後で『あれっ!』って思うといけないので(一同笑い)」(化学選択者)

文化祭で発表を終えたばかりのIB2年次生に話を聞きました。ふだんは物理、化学、生物それぞれ別の科目として学びを進めていますが、この科学協働プロジェクト(CSP)は、同じサイエンスとして、3つの科目の選択者が集まって、協働的にそして主体的にみずからの課題を追及していきました。自分が履修していない科目を履修している友だちからの刺激や気づきも大切にし、これからのIBの学びを深めていってほしいと思います。

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