更新日:2023年5月19日

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校長のつぶやき4(令和5年度)5月

聴覚障害

こんにちは校長イラスト校長の内田です。

ゴールデンウィークが終わってから、2週間以上が経ってようやく日常のペースが戻ってきたって感じです。ゴールデンウィークは長かったような、短かったような…。休みが続くと学校に行きたくなくなりますね。大人も子どもも同じです。でもちゃんと来るのが大人。仕事ですから。気持ちを入れ替えて頑張ってます(笑)。

5月も結構忙しいです。ゴールデンウィークで一週間短いはずなのに、出張が6日も入ってます。ふっ~。学校にいられる日が少ないのは、子どもたちにも会えないし、とても寂しいです。

5月は手話月間

神奈川県では、手話2「手話の普及推進を通じて、県民みんながお互いを大切にし、支えあう社会を実現したい。」その理想を掲げて神奈川県手話言語条例が施行されました。そして、この趣旨にのっとって、神奈川県手話推進計画が策定されてます。神奈川県教育委員会では、平成28年度から毎年5月を「手話月間」としています。

 

前にもお話をしましたが、私が初めて手話と出会ったのは、相模原中央支援学校に副校長として赴任した時です。相模原中央支援学校は知的障害、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害の4障害種がある全国的にも珍しい学校でした。

今の学校のように毎日、教室を回るのですが、4障害種のうちで一番コミュニケーションが取れなかったのは聴覚障害でした。挨拶一つが通じない…。なんとか子どもたちと話したいと思って、挨拶から少しずつ手話を覚えました。挨拶ができるようになると、相手も少しずつ心を開いてくれて、私の適当な手話でも少し会話ができるようになりました。今でも会話ができるようになった時の嬉しさを覚えています。

 

聴覚障害って見た目では全くわかりません。実はそこに健常者にはわからない「困りごと」があります。今日はその話題に触れてみたいと思います。

障害の状態R5つぶやき4

一概に聴覚障害と言っても様々な状態があります。

ろう…生まれつき、または言葉を覚える前から聞こえない。

中途失聴…言葉を覚えた後で聞こえなくなった。発話に問題のない人がほとんどです。

※「話せる」と「聞こえる」は全く別物。話ができるからと言って、聞こえているとは限りません。

難聴…人によって聞こえ方は違うが、小さい音が聞こえにくい。補聴器を使って会話できる人から、わずかな音しか聞こえない人まで様々います。

言語機能の障害…言葉の理解や適切な表現が困難です。失語症・言語発達障害など。

音声機能の障害…言葉の理解には支障はなく発声だけが困難です。吃音障害・構音障害・発声機能の喪失など。

 

聴覚障害がある方の困りごと(例)

 

●例1生活音を聞き取ることができない

聴覚に障害がある方は、困った生活音を聞き取ることができません。インターフォンの音に気付くことができません。車のクラクションも聞こえません。自分の起こす生活音がどの程度の大きさであるか本人は知ることができないため、知らないうちに隣人に迷惑をかける結果となり、ご近所トラブルに発生してしまうといった問題が起こる可能性が高くなります。

 

●例2人と会話するのが難しい

聴覚障害の方のコミュニケーション方法としては、筆談、手話、口話の3つがあります。(他にも空書や身振り、指文字などがあります)

筆談… 紙などに文字を書く方法です。わかりやすい言葉で簡潔に書きます。ほとんどの人とコミュニケーションをとることができますが、コミュニケーションのスピードが非常に遅くなります。中には筆談が苦手な人もいます。
手話… 手や体の動き、顔の表情などで意思を伝える方法です。理解してくれる一般の方が少ないという問題があります。
口話… 相手の口の動きを見て言葉を読み取る方法です。コロナ禍にある現在ではマスクをする機会が多いため相手の口元を見ることが難しく、スムーズにコミュニケーションをとることが難しくなっています。

 

●例3周囲の情報を得ることが難しい

聴覚障害の方は、困った周囲の情報を得ることが難しいといった問題もあります。

周囲の音による情報には、電車のアナウンスや車のエンジン音などが含まれるため、日常生活を送る上で大きな不便を感じてしまいます。音による重要な情報をキャッチすることができない可能性があるため、災害の時などは命に関わる問題になるケースもあります。

 

●例4障害が外見から分かりにくい

聴覚の障害は、外見から判断することができません。

そのため、その人に聴覚障害があると知らない人にとっては「声を掛けても無視された」などと誤解されることもあります。

 

●例5複数人での会話の流れを理解しにくい

聴覚に障害がある方でも、一対一のコミュニケーションであれば比較的問題なく行うことができます。

ただし、複数人での会話の場合には今、そして次に誰が発言するか分からないため、会話の内容を把握することができず、会話全体の流れを理解しにくくなってしまいます。

 

●例6音声通話ができないため緊急時の対応が難しい

音声のみによる会話が難しいケースがほとんどです。そのため、110番や119番に通報することや、エレベーターの非常停止ボタンを利用して、音声によって状況を伝えることができません。

 

どうしたら聴覚障害がある方の困り感が減る?

●例1スマホやスマートウオッチを有効に使う

手話もできないし、筆談をするにも紙とペンなんていつも持ち歩いてない。そんなときに有効なのがスマホです。ほとんどの人が日常的にスマホを持ち歩いています。スマホのメモに打って見せればいい。もしかして字を書くより早いかもしれません。家のチャイムもスマホやスマートウオッチに連動させて、振動で分かるようにしておけばOKです。パソコンやスマホに音声文字認識ツールをダウンロードして利用するのもいい方法です。

 

●例2ヘルプマークを付ける

聴覚障害は外見からではわからないので、「無視してる」など、あらぬ誤解を受けることがあります。そのような事態をさけるために目だつ場所にヘルプマークを付けることも有効ですね。つけることで周囲の人が理解し、配慮してくれる場面もあると思います。

 

●例3聴覚に障害があることを周囲に伝えて理解を得る

聴覚障害にはいくつかの種類や障害の程度があり、それによって周囲にお願いする配慮にも違いが出てきます。そのため、職場の上司や同僚(友達)に自分の聴覚にどのような障害があるのかを伝え、理解を得ることも大切です。

 

●例4約束や大切なことはテキストにして残す

仕事の打ち合わせなどのスケジュールや、友人との大切な約束など忘れてはいけないことや間違って伝わってしまうと困ることについては、テキストとして残しておいたほうがいいです。紙でメモでもOKですが、これもスマホは有効ですね。

 

今回は聴覚障害に関するマークの紹介をしたいと思います。

聴覚障害者マーク

【聴覚障害者標識(聴覚障害者マーク)】

聴覚障害であることを理由に免許に条件を付されている方が運転する車に表示するマーク。マークの表示については義務です。
危険防止のため、やむをえない場合を除き、このマークつけた車に幅寄せや割り込みを行った運転者は、道路交通法の規定により罰せられます。

耳マーク

【耳マーク】

聞こえが不自由なことを表すと同時に、聞こえない人、聞こえにくい人への配慮を表すマークです。また、窓口に掲示されている場合は、聴覚障害者へ配慮した対応ができることを表しています。

ヒアリングルームマーク

【ヒアリングルームマーク】

補聴器や人工内耳に内蔵されているTコイルを使って利用できる施設・機器であることを表示するマークです。
このマークを施設・機器に掲示することで、補聴器・人工内耳装用者に補聴援助システムがあることを示し、利用を促すものです。

手話マーク

【手話マーク】

耳が聞こえない人が手話でのコミュニケーションの配慮を求めるときに提示したり、役所、公共及び民間施設・交通機関の窓口、店舗など、手話による対応ができるところが掲示できます。
耳が聞こえない人が提示すると「手話で対応をお願いします」の意味、窓口等が掲示している場合は「手話で対応します」等の意味になります。

筆談マーク

【筆談マーク】

耳が聞こえない人、音声言語障害者、知的障害者や外国人などが筆談でのコミュニケーションの配慮を求めるときに提示したり、公共及び民間施設・交通機関の窓口、店舗など、筆談による対応ができるところが掲示できます。イベント時のネームプレートや災害時に支援者が身に着けるビブスなどに掲示することもできます。

ヘルプマーク

【ヘルプマーク】

義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見からわからなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方の配慮を必要としていることを知らせることができるマークです。

 


今日書いた「困りごと」や「どうしたら困り感が減るのか」については、まだまだたくさんあると思います。あくまでも一例です。

障害のある、なしにかかわらず、人には見えない、わからない困りごとは誰しもあるもの。私にだって困りごとはあります。そんなことを想像して、思いやりをもって、誰にでも優しく対応できたらとても素敵だと思います。大事なことは相手の気持ちを思うことかもしれませんね。困っている時はお互い様です。

 

今日はここまでです(了)

ルビ付きのPDF版はこちら

R5校長のつぶやき4(PDF:389KB)

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